地方国立大学に入学した長男は、大学1年生で必要な単位が足りず、大学2年生になることが出来ませんでした。
1年間で取得できた単位は合計20単位、GPAは驚くことに1.24でした。
(留年のあれこれについては、こちらの記事【大学生の留年】親として対応したこと、伝えるべき親の気持ちは?を参考になさってください。)
私は基本的には親切な親ですので、親としてできることがあるのではないか?ということを考えて過ごしました。
『大学と高校のちがい』も調べました。『大学生でやるべきこと』なども調べてみました。
そういう記事に出てくる大学生って、サークルにもきちんと入り、バイトもちゃんとし、というように、コミュニケーション能力も高く、なんだかとってもキラキラしているのです。
我が家の長男は、特に引きこもっているわけではありませんが、積極的に人とコミュニケーションを取ろうとするタイプではありません。そして、周りの人が何をしているかにもあまり興味がないし、周りの盛り上がりもスルーしてしまいます。ですので、必然的に、周りの人におくれをとります。高校までは、クラスメートや学校の先生、そして家族によって、遅刻せずに登校することや、大事なテストや書類の提出を取りこぼすさずに済みました。
でも、大学生になってからは、残念ながら、これまでのような周りからのフォローがなくなってしまったので、朝起きれずに講義に遅刻や欠席、課題の提出がおろそかになる、期限を過ぎて提出しようとして受け取ってもらえない、テストの日も寝坊して欠席してしまう、というような惨状になってしまいました。
まあなんとなくは予想できていたのですが・・・。
入学前に『大学は自分で情報をつかまえに行かなければ失敗しちゃうよ』と口を酸っぱくして伝えていたにもかかわらず、入学時のサークル勧誘やオリエンテーションもことごとくスルーしてしまい、結局は友達ができないままに大学1年生を過ごしてしまったようです。
さらに困ったことに、オンラインゲームに仲良しグループが出来ているようで、学校でだれとも話さなくても、コミュニケーションを取れる相手がいて、リアルの生活が充実していなくても当の本人は別に困ってないのです。
『ネット依存症』かしら?心配です。
まあ、そんな気持ちで私は日々、『大学生 留年』などでネットを検索しているわけなのですが、そうすると、いろいろな記事に出会えるのです。その中で、私の心にぐっと刺さったのは、京都大学学生総合支援機構学生相談部門の『留年について』という記事でした。
もうね、なんというかやさしさにあふれているというか、寄り添ってくれてるのを感じる文章なんです。
その記事は、『大学での留年について』『留年を繰り返させる行動や考え方のパターン』『留年脱出のためのちょっとした工夫』『留年・中退というキャリア』という4章で構成された記事です。序文にあたる『大学での留年について』という章から以下を引用させていただきます。
(大学の留年率についての説明のあとで)京都大学においても事情はほぼ同じです。ただし学部により留年の発生率はかなり違っており、入学定員の3割台に上る学部もあれば、1割台に留まる学部もあります。けれども、大学全体ではおおよそ2割の学生が留年しています。
これだけの数の人が留年したり、退学したりするということは、留年や退学は、単に個人の失敗としてのみ捉えられるべきものではないということです。つまり、現在の日本の社会において大学というシステムは、一定数の留年や退学を生み出すようにできているものなのだということです。
そこには、大学入学に至るまでの進路相談やキャリア教育の体制、大学の入試のあり方、カリキュラムのあり方、修学支援体制、転学科・転学部制度、編入学制度、大学での進路相談やキャリア教育の体制、企業の採用のあり方など、数多くの要因が多重に関与しています。そうした理解に立った上で、留年に取り組み、進路選択をしていきましょう。
京都大学学生総合支援部機構HP 学生相談部門 『留年について』より引用
すごく愛のある文章だと思いませんか?
この文章の後に続く残りの3章『留年を繰り返させる行動や考え方のパターン』『留年脱出のためのちょっとした工夫』『留年・中退というキャリア』についても、温かみのあるやさしい言葉で、気持ちの持ち方であったり、ちょっとしたアドバイスや、前に向かった踏み出す背中をそっと押してくれるような言葉がつづられています。
親である私は、やっぱり、今回の盛大なやらかし(1年時の単位をほとんどとっていないことですね)の理由を、本人の怠慢さや自覚のなさにどうしても求めてしまいます。留年率が高いといっても、残りの8割の学生さんは留年せずにスムーズに卒業できているわけですからね。だけど、京都大学のこの記事を読んだときに、大学進学という進路選択のフェーズから今にいたるまでの私のかかわり方も短絡的だったなと反省しました。大学に行きさえすれば何とかなるだろうと思ってしまっていました。
もし留年を不安に思っていらっしゃる方に、ぜひ読んでもらいたい文章です。
もくじ
大学生活を今より充実させたものにするためのおすすめ書籍3冊これ!
次に、おススメしたい書籍を紹介します。
我が家の長男のように、1年生の単位を盛大に落としてしまった人や、単位は取れているかもしれないけど、なんとなく大学になじめていないかもしれないと不安な人、そしてそのようなお子さんをもつ保護者の方々、はたまた大学進学を予定している高校生の皆さんに、ぜひ手に取って読んでほしいです。
こちらです。
行ってみましょう!
『大学1年生の歩き方』 トミヤマユキコ・清田隆之 (集英社文庫)
この本は、実は、長男が通う大学のキャリア教育センターのおススメ書籍として紹介されていた本です。
大学の教員でもある人気のライターのおふたりが、ご自身が大学生だったころの失敗談を語りつつ、大学教員または先輩としての目線で、もっとの不安な1年目に特化した、あたたかな指南書です。
私自身も長男と同じように高校を卒業後、実家を離れ、関西の私立女子大に進学しました。ただ、大学の学生寮に入ったため、友達作りにも情報集めにもさほど苦労せずに大学1年生をスタートさせることが出来ました。また女子大というのもよかったんでしょうね。学校そのものの規模も小さいし、面倒見がとてもいいのです。さらに、女の子って基本的には親切ですので、誰かがなにかしら声をかけてくれるんです。放置されるってことがなかった、とても恵まれた環境でした。
ですので、長男が、あまり大学になじめず(なじもうとしていない?)にいることも、多くの学生が問題なくこなしているとはいえ、一方的に責める気にはどうしてもなれませんでした。
急にそんなところに一人で放り込まれたらやはり不安ですよね。4月が過ぎて、緊張の糸が切れて、学校に行くのがおっくうになってしまうのもわかる気がします。
大学1年の4月って、人生で最も不安な4月なんじゃないかと思います。幼稚園にはいった時は、先生がトイレの場所から前ならえの仕方にいたるまで、手取り足取り教えてくれました。社会人になれば研修期間というのがあって、名刺の渡し方とか電話での受け答えとか、これまた手取り足取り教えてくれます。
それなのに、大学入学時だけはなぜか「とりあえず周りをよく見てがんばって!」みたいな、非常にざっくりしたことしか教えてもらえない(学生数が多い大学ほどこの傾向が強い)。それってなんだか理不尽ですよね。
大学1年生の歩き方 トミヤマユキコ・清田隆之 集英社文庫
その通りですよね。私だって不安になります。
この本のいいなーと思うところは、こうした感じで、「大学ってこんな感じだから不安に思うのも無理ないよ」と寄り添ってくれ、昔から変わらない学生の生態(ご自身の黒歴史も含め)を例に出しつつも、でも、『こうしたほうが楽しめるはずだよ』とアドバイスをしてくれている点です。軽妙な文章もとてもいいです。
失敗しているのは自分だけじゃないし、不安に思ってるのも自分だけじゃない。みんなそうなんだ。
って思えるのって勇気づけられますよね。
そして、もう一つ引用させていただきますね。
「素材と環境だけを与えてやるからあとはお前の好きなようにやれ」「困ったら言え。少しは手を貸してやるから」という大学のスタンスは、トライアンドエラーを繰り返すには本当に理想的な環境です。そういう場所にいることを、ぜひ意識してみてください。
大学1年生の歩き方 トミヤマユキコ・清田隆之 集英社文庫
ほんとにそうですよね。「困ったと伝えることが出来る」ようにならなくてはいけないですね。
大学には、かならず相談できる場所があります。まずは、それがどこにあるのかを確認してみましょう。対面で相談するのがハードルが高い場合は、メール相談から始めてもいいのです。困ってることを伝えることを練習してみましょう。
この本を、高校2年生の次女も読んでました。
大学の入学式にでも配ってくれたらいいのになと思うような本ですよ。
『大学での学び方「思考」のレッスン』 東谷 護 (勁草書房)
次は、大学の学び方についての本です。こちらもとてもいい本です。
本書は、高等学校までの受け身型学習の「お勉強」から、大学での学びである、自ら考え、表現する学問的姿勢への架け橋になるように随所で工夫がなされています。本書全体のキーワードは「思考」と「問う」です。
『大学での学び方「思考」のレッスン』はしがきより 東谷 護 (勁草書房)
現在は愛知県立芸術大学音楽学部教授である著者の東谷氏が、以前、成城大学の非常勤講師として、初年次教育と教養教育の改革のお手伝いをなさっていたご縁でこの本を執筆なさったとのことです。成城大学の、学問の基本を学ぶことを目標とした全学共通教育科目『WRD』の参考図書として企画された書です。科目名の『WRD』とは、学びのキーワードとして掲げられた「書くWrite、読むRead、議論するDebate」の頭文字だそうです。
例題を通して、「考える」方法を具体的に解説してくれます。タイトルの通り、『思考のレッスン』を進めていくことが出来るのです。
実際にこの本を読んでみると、大学で学ぶということはこういうことなんだ!ということがすとんと理解できます。そして、こういう方法で考えていくのってとても楽しそうだなと思えます。
高校までの学習は、答えがわかっていることを基本的な知識として学ぶ『受け身型学習』、大学での学びは、課題を自ら設定し探求していく『能動的な学び』と一般的に言われています。
最近では、高校までの授業でもアクティブラーニングや調べ学習が増えており、私たち親の世代の詰め込み教育に比べると、ずいぶんと探求型学習は増えていますが、それでも一人でそれをこなしていくのって、ちょっと難しいですよね。正解がないって不安だし、誰に聞いたらいいかわからないし、そもそも、何がわからないのかさえももわからない。、大学に入学したとたんに学びの方向性が急に変わるってやめて!っておもいますよね。本当に大学1年生って大変ですね・・・。
でも、安心してください。この本には書いてあるのです。
「問うこととは?」から始まり、読むこと、「問う」ための工夫、グラフの読み方、調べ方、書き方を、ステップを踏んで説明がされています。
もちろん、各大学の教養授業で同じような授業はあると思いますが、この本も、入学式に配ってもいいんじゃないかと思えるような内容です。しっかり読み込んでほしいので、入学式に配布というよりかは、高校の現代文の授業やLHRなんかで、1年をかけてじっくり向き合ったほしいかな!
1冊目にご紹介した本が大学生活の指南書であれば、こちらは大学で学ぶことの指南書です。とてもいい内容です。
AI時代に必要なのは「問い」を立てる能力ともいわれています。「問い」は考えることから生まれます。これからの時代にも絶対ニーズのある素晴らしい本です。
学び方を学ぶことのできる良書です。
大学1年生だけでなく、論文を書くことに不安のある学部生の方、大学での学びをのぞいてみたい高校生の方にもお勧めの本とのことですよ!
『早期対策で差をつける 大学1・2年生のための就活の教科書』 岡 茂伸 (マイナビ出版)
最後の一冊は、これまでに紹介した2冊とは少し方向性の違う本です。
著者の岡氏は、延べ10,000人以上の面接・採用選考経験をもつジョブ・アナリストです。企業の採用手法や意図を知り尽くした存在として、多くの就活生から頼りにされています。
しょっぱな、とってもまっすぐに『あなた、本当にそれでいいと思ってます???』と問いかけてきます。
私が大学生なら、この時点でそっと閉じてしまいたくなるくらいギラギラしています。
ですが、読み進めていくうちに、大学生のうちに身に付けたい人間力やどのような考え方をすれば自分を成長させてくれるのかがわかってきます。大学生活は自分の意志でデザインできるんだっていうこともわかります。
この本の内容をみて、『こういうことを考えながら学生生活を送っている人がいるんだ』と思うことはとても大切なこととと思います。そしてできれば、将来の自分はどのようになっていたいのか?ということを考えつつ、そこにいたるまでのロードマップを思い描いてほしいのです。なんとなく過ごすのではもったいない学生活を、自分なりに充実させることにつながるのではないかと思います。
私が面白いなーと思ったのは、CHAPTER4の『打ち込みたい仕事を見つけよう』という章です。ここでは、まず初めに、『業界研究ではなく、国家プロジェクトを研究しよう』と書かれています。国家プロジェクト研究で魅力的な企業を発見しようというわけです。そういうところに国のお金が集まっていくわけですから、夢がありますよね。研究方法もしっかり描かれているので、とても参考になりますよ。大学で自分が研究してみたいと思うことも見つかりそうです。
こういう方法もあるんだなーと新鮮な気持ちで読みましたよ。
自己分析シートもあります。今の自分を知ることってなかなか難しいです。時間のある春休みや夏休みに取り組んでみるのもいいと思います。
明確なビジョンが生まれたとき、人は変わり始めます。成長の歩幅もものすごく広がります。
『早期対策で差をつける 大学1・2年生のための就活の教科書』おわりにより 岡 茂伸 (マイナビ出版)
明確なビジョンって大切です。そして、一歩一歩進めていくことが大切です。
まとめ
今回の記事で紹介した3冊は、どれも、とても親切な本です。
自由だけどちょっと薄情なところのある大学というところで、こういう風に考えてみてごらんとか、こうするといいんだよとか、こういうことを目標に過ごしてみるといいんだよ、というようなアドバイスをしてくれる本です。
大人って、若者が大好きなんですよね。実は。だから、お節介もしたくなっちゃうのです。
この記事で紹介した本を読んで、不安なのは自分だけではないんだということがわかり、大学生活を今よりほんの少し頑張ってみようかなと思ってもらえたらうれしいです。